破れと挫折の中で

出典元

「わたしたちの『信条集』」

 著者 磯部理一郎

 発行 ナザレ企画(1994年)

 

p.298

教団・教区主義の破れ、各個教会主義の挫折の中で

 ある教会の老牧師が退任を表明した。ところが、後任牧師の人事にたいへん苦労し世代交代が進まず、結局その老牧師は再び復帰した。正しい福音理解と教会観に立った後任牧師を確保するのはとてもむずかしいと言われる。大都市の大教会でも苦悩しているのが現状であろう。仮に人事がうまくゆき良い後任牧師が得られても、一牧師がもって生れた才能一つで多元多様な教会全体を一つの信仰に従って鍛え上げてゆく、これもまた実に困難なわざである。破れて牧会から離れてゆく若い牧師も少なくない。ここには各個の教会の限界がある、と言わざるを得ない。牧師たちも各個の諸教会もそれぞれが余りにも多元多様化して行き詰まる中で、教会も牧師も互いに信頼し合い同質の信仰と教会観に従って共に重荷を担い合える具体的な教会共同体が、今程強く求められる時はない。